この物語はフィクションです

実在の人物、団体とは関係ありません。

君たちは粗末に扱われるべきじゃない

別れ話というのはいつだって不得意で、なんとなくそんなかんじと適当に済ませられればそうしたい。

別れるに至るにはいくつかの理由があると思うけれど、その別れ話をするにも信頼関係が必要だ。お互いの節目を迎える、大事な話だ。言葉に重みがなくてはならない。相手の言葉にも重みを感じなくてはならない。


今回の別れかたは特に最悪だった。まず明確に別れたい理由がなかった。なかったけど、別れたかった。

小さな理由はたくさんあった。元婚約者との同棲は彼と付き合う前から継続したままだったし、体調を崩したときの対応が自分本位であったこととか、何事も気の持ちよう信者だったこととか、いろいろだ。

もちろん好きなところもたくさんあった。最初は余裕のある大人に見えたし、少なくとも頭は良かった。会話の効率がすこぶる良くて、短期間で仲良くなれた。お出かけ好きな女の子はきっと彼みたいな人と付き合えば飽きることなく過ごせるだろう。あいにく私は家でごろごろするのが好きで、外に出るときは酒を飲みに行くくらいが理想だったけれど。私が一度でも好きと言ったものは覚えてて、何も言わなくても注文してくれるし、他所で遊んでくればかわいい程度に嫉妬もしてくれた。

それなりに好きだったし、大事にされていたように思うけ。しかし、どうにも「ごっこ」感が強くて辛いと感じることもままあった。言葉ではお姫様のように扱っているのに、突然放って置かれたり、いわゆる価値観が違かったのだろうとは思うけれど、このところはせっかくの言葉がセリフみたいにしか聞こえなくなってしまった。

そうして、もう別れよう婚約者と新しい家を借りて私はこの人のためだけに生きようと思っていたのだけど、彼と私には前述の信頼関係がなかった。

かける言葉が何も思いつかなかった。嘘は苦手だから、適当な事実を言わなくてはならなかった。

信頼関係があれば、何もかも本当のことを言えば良かったが(もしくはこの記事を見せても良い)、信じてもらえないというのは辛いところだ。

結局、散々連絡を無視した挙句に「もう関係を続けるのは無理だと思います」とだけメッセージを送った。私なりのサヨナラだった。


二週間後くらいから電話がかかってきた。別れたのになんでかなと不思議に思っていたが、その理由が翌月わかった。


「付き合ってくのは難しいと思う」


彼からメッセージが届いた。その途端合点がいった。彼は別れていないと思っていたのだ。文言が関係が付き合うに置き換わっただけだが、何故だろう。彼の中で踏ん切りが付いたのだろうか。

私がクリスマスや諸々のイベント前に別れておこうと思った気遣いは彼の思いひとつでなくなったのだ。この文章を書いていて、私も彼も酷い独りよがりだなとも思ったが。


別れるのが下手すぎる。前回も失敗している。しかしながら、これらの経験から何を学べば良いのか皆目検討がつかない。もう別れなんて経験しないほうがいいんだろう。